「侍女たちの憂鬱」

キャロンの侍女は元々ユリアのお付きだった者たちで10名以上いる。年齢層はユリアやキャロンとほぼ変わらない。
貴族の子女だったり村人からの採用だったり、出自はまちまちである。今回は彼女たちの日常のお話。


彼女たち侍女は元々ユリアが生まれてすぐ城に入り、共に育ってきたような少女たちなのでキャロンがお城に入る時、
ユリアも交えて話し合いをしたのだという。そのまま村に戻っても良いし、キャロンに仕えてもよい、と。
そして、ほとんどの少女はお城に残ることを選択した。その方が暮らし向きが楽になるという割と現実的な理由である。
一部の城を出た少女は実家に帰ったり、ユリアのそばに住んで身の回りの世話を続けたという。
こうして彼女たちは城の一角に住まいを持ち、キャロンの身の回りを世話することになったのだ。


キャロンの朝は結構早い。畑仕事時代の習慣か寝覚めも良く、また起きてすぐお風呂を使うためである。
低血圧気味で寝起きはあまり良くなかったユリアとは対照的であり、起こす手間はほとんどかからない。
その代りお風呂を先に沸かしておく必要があるため、早起当番がある。
そして王女が入浴すると彼女らはその間にベッドのシーツを取り換える作業に入る。
キャロンの夜着とベッドは汚れることが多いため毎日の洗濯がちょっとした大仕事になることもある。

洗濯組と並行し、朝食組が王女の朝食を支度する。この2つは交代制となっているが、どちらかというと洗濯組の方が人気がない。
王女は食べ物に好き嫌いを言わず、何でもおいしいと言って食べてしまうためあまり苦労をしなくてよいからだ。
着替えに関しても彼女たちは楽である。王女は華美なドレスを好まず、安い村人が着るような簡単な服をいつも着るからである。
それでは外交上困るときがあるので、その時は彼女たちの出番となるのだが。

朝食を終えると年長の侍女によるお勉強の時間がある。
この時間は王女が大変嫌がっている時間の一つでもあり、侍女や城内の家臣たちの頭痛の種ともなっている。
キャロン自身が村育ちであり、王族としての作法や仕事のことなど何もわかっていないため公務に差し障りがある。
だからこういう時間が設けられているというのだが、王女自身はなかなかに物覚えが悪く、そして勉強に対しての飽きっぽさが
年頃の少女らしい度合いで存在し、そして活動的でもある。…つまり、授業から逃げることがあるのだ。

キャロン自身に王女としての務めを果たそうという気がないわけではない。しかし、どうにも授業と言うものは退屈なのだ。
それくらいなら身体を動かした方がいい。村を回って人と会ったり畑の様子を見た方がいいじゃない、と彼女は言うのであるが
当然、それは城内の人間にとっては頭痛の種であった。

後々の話であるが、こうして教育的な立場にあった侍女の中からキャロンは代理人を立てるようになった。
自分が理解の及ばないところを補い、また自分の考えを理論立てて実行してくれるような秘書を勝手に任命してしまったのだ。
「この方がいいと思うのよ」と彼女は言ったが、これのおかげで秘書となってしまった侍女は大臣の渋い顔を何度も見る羽目に陥ったという。
無理もない話である。こちらの方が立場が上のはずなのに王女の代理という事で侍女に命令を下されるのだから。
幸い、彼女が忠実かつ優秀だったのと、役目を諦めて受け入れた事でラルの内政はうまく機能することになったという。


キャロンはお昼を外で食べることが多い。従って朝食時のパンや果物はわざと多めに出され、包んで持ち出せるようにしている。
侍女はキャロンについて出ることはほとんどない。外での行動には衛士が付くことになっているからだ。
その衛士もよく置いて行かれることがあり、慌てて追いかけて行ったり見失ったりすることがある。
衛士たちはキーラに乗れない以上、空を飛ばれたらどうしようもないのだ。
その時は諦めて城で悶々と過ごし、後で苦情を入れることになるが、たいていは「ごめん、気を付けるから」でおしまいである。
衛士も交代制であり、マリオもその一人である。マリオはお付きでないときには侍女たちと話をしたりする事もある。
外敵があまりいない、平和なラルの国では兵士の仕事がそんなに多くはないのだ。

夕方。キャロンが帰ってくれば夕食となる。
帰ってこない場合もあるが、その時用意した食事は侍女たちの物となる。役得である。
夕食が終わった後、また勉強の時間となる。その間、ほかの侍女たちは部屋の片づけをしたり服の繕いなどをしている。

夜になり、月が登った頃に勉強は終わり、キャロンはお風呂に入る。
ちなみにお風呂の掃除は朝、キャロンが行っている。本当は何でも自分でやる、と言っていたのだがそれでは侍女のやることが
なくなってしまうというので今のような形になっていた。
背中を流す係もいるが、キャロンがそれを頼まないときもある。

その後就寝。王女の部屋からは少し離れたそれぞれの部屋で侍女たちは休む。
王女の寝室へと通じる階段の下には衛士の不寝番がいるし、身代わり役を必要としない王女に彼女たちの出番はない。
こうして侍女たちの一日が終わる。


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侍女たちの憂鬱(裏)

ラルにおける侍女の仕事は、王女の奔放な性を受け入れることが第一である。

侍女たちの朝はまずキャロンのベッドの後片付けから始まる。
ほぼ毎日、キャロンがベッドを汗と愛液まみれにしてしまうので掃除と洗濯は結構大変である。
キャロンはほぼ確実に全裸で眠っているのであえて起こしにはいかず、まず風呂の準備を先にする。
身体が臭うのでキャロンには必ず朝風呂に入ってもらうことになっている。そうでないと来客時に失礼になるからだ。
そして風呂に入っている間に鮮やかな程の手並みでシーツとマットと汚れた夜着をすべて取り換えておく。

王女自身は華美なドレスを好まないが、それは経済的にも役立っている。
何日かに一度くらいは彼女の普段着はびりびりに破かれてしまうからである。
服の繕いも彼女らの仕事であるが、同じものを何着も用意しておいた方が遥かに効率は良い。それほど、王女は服を破くし、汚すのだ。

王女の脱走癖については侍女の一部では諦めている者もいる。せめて怪我しないようにと脱走路の手入れをするくらいに。
不在時はユリアにその間代理を務めて貰った方がいいのではという話まで彼女たちの茶飲み話には出てくる。
しかしそうならないのはユリア自身が断っているからである。ユリア自身もライケとの今の生活を手放したくないのだろう。
と、侍女たちは考えている。また、キャロンの方が自由にさせてくれるので楽だという現実的な意見もある。

キャロンが出かけてしまうと侍女たちはやることがなくなるので、それぞれの時間が出来る。
マリオはこの時間を狙って侍女たちの部屋に忍んでゆく。マリオは既に侍女全員をその手にかけ、籠絡を済ませている。
侍女たちもラモー・ルーに犯された影響で淫蕩の性を植えつけられてしまっているため、数少ない男であるマリオの来訪が実は嬉しいのだ。
この夜這い?は侍女たちの間では公然たる秘密である。それはマリオの本命を知っているからでもある。

キャロン自身は魔物相手であるならラルで一番強いため、衛士の役目は実はお飾りの部分が強い。
人間を相手にする機会も外敵のない平和なこの国では実は必要がない。王女自身、人間相手でもひけは取らない剣の腕前がある。
純粋な腕力以外で彼女に勝てるのはライケやマリオなどごく少数だったりするほどだ。
つまり彼らは通り一遍の警備の他は「男」としての役割を持っているに過ぎないのだ。

王女が外へ一人で出かけ、全裸でキーラに乗って窓から帰ってくるのは侍女たちにとってはもう慣れた話である。
外出好きの王女が綺麗な格好のまま正門から帰宅する割合は最近では5日に1度くらい。あとは大抵ぼろぼろになって空から帰ってくる。
畑仕事を手伝ったり、魔物と戦ったり、犯されたり。理由はその日によって違うが、おおよそ王女としては考えられない理由ばかりである。
これらはすべて侍女たちによって隠匿されている。どれも説明しようものなら大臣たちがひっくり返ってしまうからだ。

キャロンがぼろぼろになって帰ってくると彼女のケアに向かう侍女が一人いる。怪我や傷の手当をするのが主な役目な彼女であるが、
風呂を一緒に使うこともあり、そのまま同衾する事もある。女所帯であるため、同性での行為も嗜みの一つだったりする。
侍女たちの中には同性のカップルも複数存在し、班分けなどで密かに配慮されている。

夜。あえて彼女たちはキャロンの部屋には近づかない。寝室で何が行われているかを知っているからだ。
たとえ悲鳴が遠くから聞こえようとも、それは全て悦びの嬌声である。彼女を襲う者はすべて彼女の身体が目当てであると侍女たちは知っている。
誰が忍び込み、誰が彼女を押し倒そうとも、侍女たちは関わることをしない。辿り着いた者はそこにある果実に手を伸ばす権利を得る。
それが王女の歓びであることを知っているからだ。


そして彼女たちの真の主の望みでもあるからだ…