第2話 蝕まれゆく心





 ラモー・ルーが数多くの星々を侵略して己の支配下に治められたのは、無尽蔵ともいえる膨大な魔力があってこその所業であった。

 詠唱もなしに強力な攻撃魔法を扱え、尚且つ内に秘めた魔力を触媒にすることで自身を巨大な怪物に変貌させることですら容易であった。

 そんなラモー・ルーでも数百万年ともいう途方もない年月を生き存えてくれば力が衰えてくる。

 如何に寿命を引き伸ばすことを可能にした彼とはいえ、その根源ともいえる魔力は無限ではない。

 全宇宙の支配という野望の成就には途方もない年月を要する。この先何百年も生き存える意味でも己の魔力を回復させる必要があった。

 しかし大気中に漂うマナを取り込むのには限界がある。それは彼自身ではなく、星そのものがマナの枯渇に耐えられないという意味での限界だ。

 もしもラモー・ルーがマナを全て己のものにしてしまえば海は涸れ、大地から緑が失われてしまう。

 生命(いのち)の息吹がなければ人は生きていけない。その星は死に絶えてしまうことになる。

 全宇宙を手中に収める野望がある彼には支配する者がいない世界は意味がないのと同義であったからこそマナの吸収は極力控えてきた。



 そこで目をつけたのが生物の精気――!



 とりわけ“人間の女”の精気は魔力に変換しやすい。その中でも若く美しい女の股座から滴る蜜は濃密な精気を宿している。

 己の欲を満たしながら魔力の回復もできると嬉々したラモー・ルーが美しい乙女を黒騎士達に捕らえる厳命を下したのはその為だ。

 そして数え切れない程に娘達を犯して滴る蜜を取り込んでいった結果、とりわけ穢れのない高貴な血筋を引く娘の蜜は格別であるという成果があった。

 まだ全盛時に程遠い魔力であっても数十年万前と比べれば格段に魔力が増加していったのである。

 とはいえ伝説の武器ともなれば如何に魔力を高めても防ぐ手立てがない恐れがある。敵対する者の手に渡れば脅威となろう。

 故に持つ者に無尽蔵の力を与えるというリバースの剣は是が非にでも手元に置いておく必要があり、またその力を己のものにすれば全宇宙の支配は
 容易になるという結論に至ったのだ。

 ならばその伝説の剣の担い手になった娘の蜜は語るまでもない。存分に吸い尽くせばおそらく一つの星で得られる魔力をたった一人で賄うことに
 なるのではないだろうか。

 ラルの星で古の時代に建造されたというゴモロスの神殿で発見したという金髪の少女を己の宮殿に誘き寄せる手間など今となっては些事に等しい。

 現にその手間を惜しまなかったからこそ目的の少女を捕らえることに成功した。

 身動きできないように取り抑え、心までも封じてしまえば、あとは濃厚であろう蜜を存分に味わうだけだとラモー・ルーは裸に剥いた矮躯を見下ろす。

 然るに悲壮なまでに少女に呼びかける背後の声など無力に等しく、如何に「「剣士様っ! リバースの剣を、リバースの剣を使うのです!」と諦めない
 王女の虚しい呼びかけは非道なる魔道士にとってはこの上ない演出としか聞こえていなかった。

 だからこそたっぷりと時間を掛けて蜜を味わうことはユリアにより絶望を与えることになるだろうと密かに企む。



――王女ユリアが絶望に嘆く様を見るのも面白い。希望を失った貴女を闇の女王への供物にすることが相応しい



 嗚咽混じりの声が侵略者から凌辱者へと変わったラモー・ルーの気分をより高揚させる。

慈悲という感情がないからこそ無駄な呼びかけを続ける王女を滑稽に思う。



――そこで最後まで見ているのだ。この娘が滴らせる蜜が私に力を与える様を、そして悦楽に飲み込まれて私の傀儡と化していく様を!



 ユリアに向けた声なき宣言は同時に魔力の回復という名目の陵辱劇の幕開けを意味し、

これを境にラモー・ルーの意識からユリアの声は隔離されてしまう。

 今の彼は目の前のキャロンしか眼中にない。あどけなさが色濃く残る顔だち、小ぶりながらも形よい胸の膨らみから順に無毛の股間へと視線を移す。



「そう、良い子だ」



 じっくりと視姦しても少女には恥ずかしがる素振りがない。すなわち掛けた魔術が効いている証だ。

 たとえ魔術が効いていなくても蜜を味わうことに関して支障はない。これは己の傀儡と化すのに必要な処置だった。

 無防備にさせた心ほど快楽を受け入れ、やがて悦楽に溺れてしまうだろう。しかも彼が与えるのは人では成し得ぬ魔性の快楽と呼べるもの。

 逆らう心がなければ王女のように反発することはなく堕落させるのも容易いという目算があってのことだ。

 故に魔術の掛かり具合を確かめるべくラモー・ルーは手始めに右手をおもむろに乳房へと這わせる。

 手の平に伝わってくる瑞々しい肌の柔らかな感触は若さに満ちあふれて申し分がない。

 吸いつきそうな肌触りの頂に鎮座する白桃色の蕾もまたコリコリとした弾力があり、本来の目的を忘れてしまいそうになる魅惑に満ち、甘い息遣いが
 聞こえだすとそそるものを感じさせられる。

 上下に擦って撫でまわすと手の平全体にその感触が伝わってラモー・ルーは目を細めた。



――ほほう、なかなかの感度。どれ……



 心を封じ込めても意識まで閉ざさないのがこの魔道士の妙技。無防備な精神はラモー・ルーの手つきをありのまま受け入れてしまう。

 その反応が如実に表れたのは漆黒の禍々しい形をした指が乳首を捏ねまわした時だ。忽ち硬さを増して尖りだす。



――フフフ、これなら十分に愉しめそうだ



 魔力の回復はもちろんのこと、凌辱者としての顔を剥き出しにしたからこそキャロンの反応は愉快でならなかった。

 可憐な乳房を揉みしだこうとする手つきに思わず余分な力が入って鷲掴みにしてしまう。



「はぐっ! あっ……あぁ」



 指先が乳肉に食い込むほど強く握られたキャロンが呻いて嫌々とかぶりを振った。それは痛みによる反応とは少しばかり違っているように受け取れる。



――術が完全に効いていない!? フフフ、流石だ。それでこそリバースの剣に選ばれし者よ



 己の魔術に絶対の自信があっても、相手が伝説の剣士ならば納得がいく。故にキャロンの心が完全に封じ込めていなくてもラモー・ルーに
 僅かな動揺すらない。

 むしろ心では拒絶していても身体が刺激に反応してしまうジレンマに何時まで耐えられるかという興味に嗜虐心を擽られていた。



「剣を失えば貴女も可愛い」



 まさにその言葉通りだった。

 如何に選ばれし剣士とはいえ、剣がなければ所詮は無力な小娘。しかも四肢を戒められ、完全でないにしろ心を封じた状態では抗う術など一切ない。

 さながら巨大な肉食獣の前で怯えて竦むだけの小動物のようなもの。ならばその運命が覆ることなど万に一つとしてなく、今のキャロンはその状況に
 置かれたのと同義。

 心でいくら拒もうが若々しい肉体を捧げることになる。



――さて、そろそろ蜜を頂くとするか



 期待に心躍らせるラモー・ルーが突如としてその姿を変える。

 漆黒の人の姿が崩れると手が幾つも生えだし、胴体を膨張させていく。角があるフードで顔面を覆う頭部が不気味な蜥蜴かあるいは蛇のように
 形成していくのは瞬く間のことだ。

 その変貌に背後のユリアは驚愕のあまりに絶句してしまい、もはやキャロンへ呼びかけることすらできない。

 爬虫類のような頭部をもつ巨大な蜘蛛とおぼしき巨躯の圧倒的な存在感は王女を絶望させるには十分な効果があったのだろう。



「リバースの剣はそれを持つ者には絶対の武器になるという」



 ならばその担い手から蜜を採取すると得られる魔力は言うまでもない。今からそれを堪能すべく人型に残した手をキャロンの秘部へと伸ばす。

 なだらかな盛り上がりをみせる恥丘には1本も陰毛が生えていない。ぷっくらとした大陰唇が合わさった小さな割れ目はまだ穢れを知らないようだ。

 そこを指で触れてみると柔らかな感触が伝わってくる。だが、ラモー・ルーはその感触を堪能せず、指に引っかけて強引にこじ開ける。



「はああぁ、あううぅ、くっ!」



 拒絶の意思を示すように嫌々とかぶりを振るキャロンの口から恥辱を訴えるかのように呻きが漏れても、今の彼女には何一つ抗う術はない。

 完全でないにしろ、心が封じられた状態では言葉を発することができず、全身の筋肉を僅かに強張らせるのが精一杯の表現なのだろう。

 しかしそれは魔物の如き姿に変貌した凌辱者の嗜虐心をより擽る結果しか伴わない。

無慈悲な思考しか持ち合わせていないラモー・ルーの欲情を滾らせてしまう。



――フフフッ、その旨味をじっくりと味あわせてもらおうか



 鋭利なまでの長い口が開き、そこから唾液にまみれた太く丸みを帯びた舌が伸びる。続けて舌の周囲に肉色の触手が無数に生えて長く伸びた舌を追う。

 それぞれが目指した先には強引にこじ開けられた状態の秘貝があった。まず先陣を切って最初に伸びた極太の舌がキャロンの陰部に辿り着く。

 新鮮な色をした粘膜に触れた直後、ネチャという粘質な音を響かせて舌先が蜜穴に潜り込む。

 押し出そうとするかのような膣肉の締めつけをものともせず、処女膜に届く直前まで埋めていく。

 続けて肉触の触手が大陰唇に群がって揉みしだき、あるいは舐めるように撫でまわす。



「んっ……くっ……」



 大事な箇所に柔らかな異物を挿入された悪寒を訴える呻きはどこか艶を帯びている。

ラモー・ルーの魔術が単に心を封じただけでなく、発情を促す効果もあったからだ。

 精神とは真逆に解放された肉体は魔術を掛けられてからは膣内に潤いを満たす程に愛蜜を分泌させられ、まだ処女膜を突き破るに至っていないからこそ
 痛みを感じていない反応だった。

 ラモー・ルーが敢えて純潔を奪うことだけは避けた結果だ。破瓜の血が混じる前の蜜の味を舌に刻み込もうとしたに過ぎない。

 浅く挿入させた舌先が開きだして膣壁に食い込み、膣穴から漏れださんとする乙女の蜜を啜りだす。

 汲み取るように吸い込む反動で長い舌が愛蜜の流れに合わせて収縮を繰り返し、僅かだが注挿を開始した。



「あ、あぁっ……んぁ……い……ゃ……ぁ……」



 不気味なモノを挿入されただけで済まず、吸引しながら浅い注挿でキャロンの口から甘い声音が漏れる。

 目尻に涙を浮かべる感情とは裏腹に、刺激を受けた肉体は愛蜜が枯渇する前に潤いを保つ。



「思った通り、美味い蜜よ。久しく100万年前の魔力が蘇りそうだ」



 高貴なる乙女の蜜は旨味が凝縮されて尚、より魔力に変換しやすい。

 取り込めば取り込む程に己の魔力が高まる。かつて制圧した星々でラモー・ルーが得た経験からの判断だった。

 それが伝説の剣に選ばれた少女の蜜であれば果たして――想像していた通り、ラルの星の王女であるユリアの蜜を遙かに凌駕する濃厚な味が
 舌から喉へと流れ込んでくる。

 ジュルジュルと啜るごとに魔力の漲りを感じさせるのであれば、かつての魔力を取り戻す日は近いと淫獸と化した魔道士は陰唇に引っかけた指を離し、
 キャロンの太股をがっちり掴んで股を開けさす。

 微かに抵抗したかのように膝がピクリと動いたが、愛蜜を啜る刺激に反応しただけだったようだ。手に伝わる太股の感触からして筋の強張りが
 感じられない。

 悲鳴に似た嗚咽混じりの声にしても彼女のものではなく、その光景を見かねて涙を飛び散らせながら顔を背けた王女のもの。

 チラリと様子を見てみると、辱められるキャロンの姿をもう見たくないと言わんばかりに目を閉じて表情を蒼白に染めていた。

 しかし静寂の中で聞こえる卑猥な音まで閉ざすことはできない。

 微かに聞こえる程度の音でも粘質的な音は絶え間なく続き、それに紛れてジュルジュルという愛蜜をする音が鼓膜を刺激していることだろう。

 押し殺すようなキャロンの嬌声がそこへ追い打ちをかけ、囚われの王女は鎖で吊された両腕を耐え忍ぶように震わせていた。



――フフフ、そう言えば王女殿も最初にこれを味わったのだったな



 鎖を震わす音が背後から聞こえてラモー・ルーは冷笑しながらも意識の大半はキャロンの膣穴に挿した舌先へと向けている。

 魔術をもって膣内の様子を見ることに比べれば、ユリアの慟哭など些細なことに過ぎない。

 開いた舌先から愛蜜を啜ると、膣道が収縮して処女膜が震える様はこの凌辱者にとってこの上ない絶景となる。

 更に紅い双眼は結合部を捕らえ、吸引で伸縮する動作に合わせて陰部全体が窄まる様を見逃さなかった。

 膣の内外を露骨なまでに視線を浴びせる行為はキャロンの羞恥心を煽るためでもあった。

 それを助長させているのが舌を取り巻く触手達だ。窄んでは戻る肉唇を愛撫することで不必要なまでに意識させる。



「うっ……いや~~んっ! あっ……はあぁ、んっ……」



 どんなに甘い声音を出すまいとしても魔性の快楽には逆らえない。

 浮かべた涙を飛び散らせてかぶりを振ったところで快感は掻き消すどころか、より意識して心が蝕まれていくことになる。

 加減を弁えた吸引を伴う浅い注挿はキャロンの意識を決して失わせず、さながら焦らすように繰り返す。

 ゆっくりと小刻みな動きでクチュクチュと粘り気のある湿った音を聞かせることによって被虐心を擽る。

 案の定、キャロンの性感は高まり、締まりすぎた蜜口が解れつつあった。小刻みに出入りする舌の動きを滑らかにする程、愛蜜の潤いもより
 潤沢になっていく。

 乳首は触れずとも硬く勃起しきり、クリトリスもまた包皮を剥きだして覗かせているのは感じている証拠。精神は拒んでも肉体は快楽に屈しつつある。

 それをキャロン自身が自覚していることだろう。

 また目尻に涙を溜め、自分を鼓舞するかのようにポニーテールを振り乱し、この後に及んで四肢を動かして戒めから逃れようと足掻いた。

 このままでは心地よい誘惑に心までも屈してしまう危機感がさせたのであろう。一度でも誘惑に負けたら後戻りはできなくなると最後の抵抗のように
 見てとれる。



「剣士さまぁっ!」



 背後からの叫びが少女の足掻きを後押しする。

 ユリアもまたキャロンの抗う心が限界に近づいていると感じたのだろう。一縷の望みを繋ぎとめようとしながらも、悲壮感を顕わにした声音だ。

 故にラモー・ルーは愉快でならない。王女の涙声は絶望の現れであり、被虐の少女の足掻きは心が追い詰められた証拠。

 その足掻きが止まった時こそ彼女の心を完全に封じ込み、従順な傀儡にして蜜を滴らせる性奴隷に成り下がる瞬間だ。



「そう……そうだ、もうじき身も心も私のものとなる」



 淫虐の思考を持つこの者に僅かな慈悲の心はない。キャロンの精神が屈服する瞬間が訪れるまで嬲り続ける腹積もりだ。

 いや、たとえ心まで己のものにしても終わることはないだろう。

 かつての魔力を取り戻すまで、その日が訪れるまでリバースの剣に選ばれし少女は股座から蜜を溢れさせなければならない。

 卑劣にして姦濫極まりないラモー・ルーの淫宴はまだ始まったばかりだ。















 少女は“どうして?”と自分に何度も問うた。



 繰り返し“もうやめて”と心が何度も訴えた。



 なぜ身体が思うように動かず、言葉を紡ぐことが困難になったのか分からない。

 妖しく輝いた紅い双眸を見てからというもの、周囲の声がはっきりと聞こえているのにまったく分からない。

何かを喋っているとしか理解できず、言葉を咀嚼する思考が欠落した感覚が常につきまとう。

 全身にところ構わず冷たい手が這い、股座に滑った不気味な舌が突き刺さった感触が心地よく、妙な昂揚感がじわじわと沸き起こる感覚が
 身体の奥底から熱くさせる。

 より顕著に現れるとそれは魅惑的であってなぜか怖い。辱められる以上の恐怖を感じる。

 ラモー・ルーの心を封じる魔術に掛かったキャロンが理解できたのはそこまでだった。

 見つめてくる視線が離れないことに羞恥心が擽られても抗えないもどかしさ。

 裸をまじまじと見られるだけでも恥辱なのに、他人には絶対見られたくない箇所を覗きこまれている感覚は耐え難いと思いながらも
 受け入れてしまっている自分が信じられなかった。



 こんな恥ずかしいことされてなぜ罵る言葉を何一つ発せられないのか。



 嫌悪でしかない筈の卑猥なことをされてなぜ気持ちがいいと感じてしまうのか。



 分かっているのはこれを受け入れてしまえば自分が自分でいられなくなるということ。それは理屈ではなく、キャロンが本能的に感じとったものだ。

 故に曖昧で不確かになっていく意識の最中でも頑なに拒み続けた。唯一にしてささやかな抵抗は脆くても縋るしかなかったのだ。



――やだ、やだよぉ……もうやめて~~っ!



 キャロンは幾度となく心の中で叫んだ。



――もういい加減にしてよ、バカっ、この変態っ!



 罵りの言葉も心の中で叫んだ数はこれで何回になるのだろうか。

 然るに言いたいことが一言も声にできず、甘い響きの声音ばかり漏れてしまう。いっそ口を噤んでしまおうとしてもそれすら叶わない。

 顔を背けて涙する王女さまが時折こちらをチラリと見ているのがキャロンには恥ずかしくてならなかった。

その眼差しが哀れんでいるような気がしてならず、余計に羞恥を煽られている気がしてしまえば尚更だ。



――いや~~ん、もう見ないでくださいよ~~ぉ



 何かを訴えているようであっても、そんなことはどうでもいい。とにかく目を瞑ってほしいとキャロンは切実に願う。

 とはいえ、意識は王女ばかりに向けていられない。秘部をこじ開けて潜り込んできた滑った感触が抗う心を挫いてくる。

 まだ深く潜り込んでいなくても、ジュルジュルと吸いたてる動きが痺れとなって背筋を駆け上がり、脳髄へ鋭く突き刺さってなんとも堪らない。

 一度だけにとどまらず、波状となって押し寄せてくる電撃はあまりにも甘露で刺激的だ。

 未知なる感覚は気を抜けば忽ち心が溶かされてしまうのかという錯覚がキャロンを怖じけさせる。

 目を瞑って耐え抜こうとしたまさにその時だ。ささくれたような細長い何かが唇を割って口の中に潜り込んでくる。



「んぶっ!」



 視界を自ら遮ったキャロンはそれがラモー・ルーの人差し指だとまだ気がついていない。

 顔を背けて吐き出そうにも、ポニーテールの結び目を人の手のようなものが抑え込んできてさせてもらえない。

 舌の上を硬く冷たいものが我が物顔で這いながら喉を小突き、一度ならず二度三度と引き返しては潜り込んでくると突如として膨張しだす。



「んぐぐっ、うぐっ! ん、んんーーっ! んっ、んぐっ、ごふっ! んっ、んんうぅぅっ!」



 眉間に皺を寄せて目蓋を閉じるキャロンに対して次なる恥辱は口腔を穢すことにあった。

人差し指を軸に五指全てを一体化させながら形を変えて男の生殖器を模したのだ。

 小さな口を限界にまで開かせる怒張と化し、ゆっくりとした注挿をもってその形を覚えさせるような動きと感触にキャロンは嫌悪し、
 全身の肌が粟立つほどの悪寒に肩を窄めるしかなかった。



「んぶ、んんっ……じゅる……ふぁ、あふっ、んっ、んんっ! げほっ、げほっ、あがっ! んぶぶっ、んんっ、んんーーーーっ!」



 口いっぱい頬張ることを強要してくるに飽き足らず、男根と化したラモー・ルーの手は喉までも突いてくる。

 唾液ごと押し込むように突いてくる闇色の肉棒は徐々に注挿を速め、咽せて涙するキャロンにお構いなしだ。息苦しさも相まって、
 金髪の少女は何かを考える思考が覚束ない。

 自分の唾液が注挿を円滑にしてしまっていることなど到底知る由もなく口淫を強要される。



「はふ、んはっ……んぶ、んんっ……じゅる、じゅるるっ……んぐ、ん、んくぅぅ」



 飲み込めなかった唾液が口元から流れて顎を伝い、ポタポタと胸元に雫を溢す。

 落ちた唾液の溜まりが儚い胸の谷間を濡らしながら広がり、その一筋が小高い膨らみの間を抜けていく。



――苦しいよぉぉ、早く終わってぇぇっ!



 休まずに続く恥辱この上ない行為そのものより、むしろ息苦しさがキャロンにとって辛い責め苦に感じてならない。

 満足に呼吸ができず、意識が霞んでは辛うじて繋ぎとめるのが精一杯だった。



「んぶぶっ……げほっ! んあっ、んっ、んくぅ……ん、ん、んふぅぅっ!」



 苦しさのあまりに目尻溜めた涙が溢れて頬を伝う。聞こえてくるのは自分の呻き声と口腔を掻きまわす卑猥な水音。

 凌辱者の含み笑いを聞き取る余裕などなく翻弄されるキャロンには、まだ半刻も経っていないこの口辱がとても長く感じていた。



――このままだと……息が……



 喉を突かれ不十分な呼吸がじわじわと精神を疲弊させていく。

 弱りつつある心がラモー・ルーに掛けられた魔術の影響を強くしていくにつれて、キャロンの心は自覚がないまま少しずつ確実に封じ込められつつあった。

 やがて前触れもなく肉棒を模した手が引き抜かれて息苦しさから解放される。キャロンは何度か咽せたあとに息を弾ませながら自由に
 呼吸ができることに安堵した。

 なぜ抜いたのかなどという疑問など湧かない。これでようやく解放されるかもしれないという期待もない。

 たとえ生臭い空気でも自由に呼吸ができる安心感が引き金になったのか、下腹部が急に疼きだして熱を帯びていく。

 膣穴から愛蜜を啜る律動と相まって押し寄せた途端、身体の奥から沸きたつ熱と結びついて全身へと広がっていった。



――気持ち、いい……えっ!? あたし……今、何を……



 蜜を吸われる感覚に初めて快感と認識した自分の思考をキャロンは戸惑いながら疑う。

 一瞬とはいえ表情にそれが出てしまったことを自覚させられても認めることだけはできない。

 だが膣肉を震わす振動は身を委ねたい衝動に駆られてしまう。拒む意思を手放せばどんなに気持ちがいいものだろうかと淫らな感情が涌いてくる
 自分が信じられなかった。



「うう、ふぅ……ふぁ、あああぁぁっ!」



 少女のそんな揺れ動く心情に肉体は過敏に反応して愛蜜の分泌を促進させる。

 キャロンが如何にかぶりを振って否定しようが、溢れる愛蜜が粘り気を帯び、その滴りに歯止めは効かない。

 肉体の正直な反応は自分で制することができず、表情に出さずともラモー・ルーが知ることになる。



「そうれ、蜜の極めを頂くとするか」



 膣穴に潜り込んだラモー・ルーの長い舌が一瞬ブルンと震えたあとに引き抜かれ、愛蜜が糸を引いてプツンと切れる。

 淫裂は粘膜を覗かせたまま閉じきらず、濡れた隙間からトロリと淫らな汁が滴り落ちた。

 そこへ漆黒の手が迫る。

 小さな割れ目を2本の指が挟むように添えられ、ぷっくらとした肉に捻りを加えて左右に開く。



「あっ、ああああっ!」



 淫唇を開かれたことよりも、直前の捻れが剥き出しの肉芽を刺激していた。ジーンと大きな痺れが脳髄にまで響いて余韻を残す。

 太股が痙攣したかのように震えても、キャロンは自分で鎮めることができなかった。



――エッチなことされてあたしの身体がヘンになっちゃったの?



 自制できない疼きと火照りを持て余す少女は自分に問う。頭の中に響く余韻が冷めつつある中でも、なぜ言いし難いもどかしさを感じたままでいるのかと。

 心臓の鼓動がドクンドクンと早鐘の如く脈打って感情を逆撫でることに苛立つ自分に疑念を抱き、今の表情を見られることを恥じて顔を背けた。



――とにかくこれで終わって……



 闇色のローブで全身を覆う凌辱者の手が股間から離れ、今になってようやく僅かな期待を膨らますキャロンがゆっくりと目蓋を開く。

 身体が自由に動けさえすれば、いつか逃げ出す好機は訪れると考える少女のラモー・ルーに対する認識は甘すぎた。

 魔術の影響が強まり、もはや身体が意思に従わなくなっていることに気がついていない。何よりも欲深さを見誤り過ぎていたのだ。

 魔物の姿と化した魔道士の下腹部からせり出した漆黒の肉塊が急激に伸びて股間へと迫る。

 直立不動のそれは先細った先端を膨らませ、やがて蛇の頭部のような形状を整えた。

 その気配を察してキャロンは恐々としながら直視する。



――今度は何、終わったんじゃないの!?



 圧倒的な存在感が目に飛び込み、自分の認識の甘さを痛感したキャロンに残されていたのは深い悲しみと絶望。

 ラモー・ルーの意図を悟った少女の目尻から一筋の涙が零れて頬を濡らす。もう自分ではどうすることも出来ないからこそ諦めの境地に至った。



「うぅ、ぁぁ……ペルル……助けてぇ……」



 もうすぐあの太いモノが自分を串刺しにしてくる。その怯えが弱々しくありながらも、ここに居ない相棒に助けを請う思いを声にさせた。

 だが思ったことの半分も言えていない。魔術の戒めは紡ぎたかった言葉を封じ込め、疼きを伴う火照りを強調させてくる。

 意識を無視して身体がもぞもぞと動いたのはその為だった。逃れたいと願う意思に反して肉体は巨大なペニスを求めてしまう。



――嫌なのに、怖いのに……



 意識は頑なまでに拒み続けても、迫る巨棍を見る瞳までが裏切る。愛らしい双眼が脳裏に焼きつけようとしてきたのだ。

 キャロンは視界を閉ざすしか術がなく、その心情はラモー・ルーに筒抜けだった。



「フフフ、苦しいか。すぐ楽にさせてやる」



 まさに処刑宣告とも等しい言葉が少女の鼓膜を刺激する。

 じわじわと迫る気配は見ずとも感じられ、それが股間を貫く運命はもう避けられないと観念したキャロンは眉間に深い皺を寄せて目蓋を強く瞑った
 その時――!

 石畳の床はおろか、地上に浮き上がっている筈の宮殿が大きく揺れだした。

 そして一際大きな揺れが引き起こされた直後、石で塗り固められた天井の一部が崩れ、そこから差し込む雷鳴が広間を眩しく照らして轟音を撒き散らす。



「――あっ!?」



 驚きの声を上げたユリアの声に続いてラモー・ルーの唸り声が耳に付く。



――なんだろう……地震?



 今さら何が起きようと驚きはしない。観念した意識は暗闇に包まれていき、今となっては何も感じなくなっている。



「キャローーーーン!」



 誰かが自分の名を叫んでいる。

 何処かで聞き覚えがある声だとキャロンが思った直後、どこか親しみを感じさせてくれるような呼びかけは閉ざされていく心へ瞬く間に染みこんでいく。

 その声こそまだ半日の付き合いとはいえ、もっとも信頼できる相棒であり良き友人。

 心の繋がりがあるからこそ何も感じなくなった心を震わせ、魔術による呪縛を撥ね除けたのだ。

 目をパチパチとさせて見上げたキャロンの瞳に光が再び宿る。



「ああぁ!」



 決して聞き違えることなく、見上げる閃光の中でも小さな影を見逃すことはない。大きな耳を翼代わりにして羽ばたく姿を目で追う。



「キャローーーーン!」



 もう一度呼びかける声は閃光から抜け出し、傷だらけになりながらも失われた剣を咥えながら一目散に向かってくる。

 彼が如何なる苦難を乗り越えてここまでやってきたのか分からない。

 元々は人間で剣士を目指していたという小さな竜が、抵抗できぬままこんな目に合う自分を信じてくれていたのが無性に嬉しくてならず、
 キャロンは笑顔を取り戻す。



――ペルル……やっぱり来てくれたんだ



 満面の笑みで見上げる頭上で急停止したペルルが咥えていた剣を落とす。受け取れと叫ぶ彼に頷き、戒められた左手に精一杯の力を込める。

 身体はもう意識に逆らったりしない。拘束されていても剣の落下は絶妙な位置であとはしっかりと掴むだけだ。

 これが本当に伝説の剣ならば受けた屈辱を晴らすことができる。囚われの王女や侍女達を助けることができるとキャロンは静かに闘志を燃やす。

 そして剣の柄を今まさに掴もうとした瞬間――!



「させるかぁーーっ!」



 怒号と共に長い影がキャロンの目の前で踊った。

 甲高い音がした時にはラモー・ルーの手が鞭のように伸ばして伝説の剣を弾き飛ばしていたのだ。



「あらっ!?」



 本来なら左手に収まっている筈の剣がなく、まだ事情が飲み込めていないキャロンは何度も自分の手を握りしめる。
 当然ながらそこに硬い感触はない。



「確か目の前に落ちてきたわよね。なんで無いの?」



「バカっ、何言ってんだよ! 剣はあそこだ」



「どこよ、どこ?」



「たくっ、世話が焼ける」



 頭上からの声にキョロキョロと辺りを見渡すキャロンであったが、それをいつまでもラモー・ルーが傍観している筈もない。

 魔物と化した魔道士の姿は小さな竜が剣の元へ急ぐ姿を視界に捉えると忽然と傍から消え、元の姿になって別の場所に現れていたのだ。

 キャロンが気配の移動を感じた場所に目で追いかけてみると紅い双眸は既にペルルを見下ろしていた。その足下に転がっている剣に一瞥し、
 また小さな竜に向きなおる。

 キャロンは突然のことに戸惑って声を出せず、ただ見守るしかなかった。