第3話 堕落への導き





 全身傷だらけのペルルが必死の思いで宮殿近くの森から見つけたリバースの剣は、持ち主であるキャロンに渡せぬまま床の上に転がっている。

 彼が小さな竜の姿にされた利点を生かして少女の頭上から急いで取りにいった時だ。離れた位置から忽然と漆黒の魔道士が目の前に現れた。

 剣が足元にありながら、ペルルは威圧されてまったく動けない。屈んで剣を咥えるという動作すら許されなかった。

 少女が手にしようとした剣を弾き飛ばしたのは誰もが恐れる慈悲なき侵略者。これまでに滅ぼされた町や村は数え切れず、

いったいどれ程の尊い命が犠牲になったことか。



「それがリバースの剣か。よもや私の宮殿に貴様のような輩が忍び込んでいたとは」



「ラ、ラ……ラモー・ルー!?」



「いかにも。唯一にて絶対者であるラモー・ルーとは私のことだ」



 かつて勇敢に戦いを挑んだ者達は悉く返り討ちにされ、誰一人として生きて帰ってこなかった。

 名を馳せた勇者ですら打倒を果たせなかった恐るべき魔道士が今、怒りの形相でペルルの眼前にいる。

 圧倒的な威圧感を漂わせて見下ろす姿はまさに魔王。ひと睨みされただけで動けぬのも無理はない。



「こ、この剣はキャ、キャロンのものだ。お前なんか、に……ぜ、絶対にわ、わ、わ、渡さ……な、な、ないぞ」



「つまり私に楯突くというのだな」



 ペルルがキャロンに剣を渡すことはラモー・ルーに敵意を示すのと同義。故に明確な殺意をもって見下ろされてしまえば恐怖で身を竦ませるしかなかった。

 支配者ラモー・ルーの逆鱗に触れたペルルは今、死の恐怖を存分に味あわされているのだ。



「ん!? どこかで見たことがあると思ったが、あの時の小僧か。まさか貴様がリバースの剣を持ってくるとはな」



「な、なんだよ!? お、俺が来ちゃ……も、も、文句あるって、いうのかよ」



 虚勢を張ったところで状況が好転しないことは本人が一番分かっていた。ただ生来の負けん気が弱気になった心を懸命に奮い立たせているにすぎない。

 せめて伝説の剣をどうにか相棒の少女に渡せる好機をもう一度得られたらと己を叱咤するも、怯えてしまうあまりに身体がブルブルと震えてしまう。



「以前に私の前から泣きべそをかいて逃げ去った小僧がよくもここまで来たものだ。

 命だけは助けてやったものを。そんなに早く死にたいか、小僧」



「こ、こ、怖くなんかあったりし、し、しないぞ。ほ、本当だからな!」



「フフフ、リバースの剣を差し出すというのなら貴様ごときもう一度だけ見逃してやってもいいがどうする? 

 おとなくしリバースの剣を渡して去るか、それとも……」



「い、言っておくが……あ、あ、あの剣は、キャロンに……わ、わ、渡すつもりですからして……お前なんかに……あ、あわわっ!」



「そうか、身の程を知らぬ馬鹿な小僧よ。己の愚かさを思い知るがいい!」



 ペルルがいくら足下の剣を取る隙を窺おうとしても、怒れるラモー・ルーの冷淡な眼差しに捉えられては身を守る動作もできない。

 そこへ制裁の一撃が迫る。



「ペルル逃げてーーーーっ!」



 殺意が籠もった唸りを真っ先に感じとったキャロンの叫びも虚しく、触手と化した漆黒の腕によって小さな竜の姿が横薙ぎに殴打されて石壁に
 叩きつけられる。

 弾き飛ばされた本人が自分の身に起きたことが分からない程のあっという間の出来事だった。

 ビュンという風を切る音がした直後、全身に強い衝撃を感じたときには床に倒れ込んでいたというのが彼の率直な実感だ。

 痛みを感じる余裕などなく、朦朧とした意識の最中で懸命に身を起こそうとする。



「キャ……ロン…………け……剣……を……」



 リバースの剣を渡したい一心がペルルを動かすもそこまでだった。

 全身を痙攣させながらも必死に立ち上がろうと大きな耳を支えにする彼の意識はもはや繋ぎとめておくことが出来ない。

 歪む視界に映る囚われの少女の姿が霞だし、やがて霧に包まれて消えていく。



「ペルルーーーーっ!」



 自分の名を叫ぶ声が次第に小さくなるにつれて意識もまた深い闇へと沈んでいった。















 その頃、一つの人影がラモー・ルーの宮殿に忍び込んでいた。

 灯りが不十分な暗い回廊を利用して姿を闇に溶け込ませ、音もなく鮮やかな足裁きで駆ける影は慎重且つ大胆に黒騎兵達の死角を掻い潜る。

 気配を遮断し、侵入した形跡を一切残さない。この者にとっては幾つもの視線から逃れることなど造作もないことなのだろう。

 フードが付いた紺色の外套を靡かせ、面紗(めんしゃ)で素顔を隠していながら曝け出す鋭い眼光は常に先を見据えている。

 黒騎兵に隙あれば唯一の武器である短剣を握りしめてじりじりと迫り、鎧の隙間を狙って仕留める手際の良さと判断力は豊富な経験なくして成し得ない。

 一撃で急所を突き刺す俊敏さと力強さからして、若くして数多(あまた)の死線を潜り抜けたであろうことが窺えよう。

 外套から覗き見える細身の体躯が十分に鍛え抜かれた男のものであるからこそ一連の行動は迅速だった。仕留めた黒騎兵を隠すことにも無駄な動作は
 ない。

 ところが一見にして沈着冷静のようであっても、天井の更に上を気にするような素振りを見せる。

 急(せ)いている感情が焦りを呼び込み、ついに終始無言を貫いてきたこの若者の口を開かせた。



「上に通じる階段はどこだ、どこにある! あの方がラモー・ルーと戦う前にお伝えしなければ取り返しがつかないことになるというのに!」



 幸いにも彼の声は遠くまで響かず、誰にも聞かれることはなかった。足早にこの場を立ち去る紺色の外套は再び闇の中へ溶け込む。

 上に通じる階段を求めて暗く迷路のような回廊を彷徨い続けた先で黒い甲冑を纏った衛兵を仕留めても、費やした時間の分だけ彼の焦りは募るばかり。

 自分よりも先にこの宮殿に乗り込んだ金髪の少女の姿が青年の脳裏に幾度となく浮かぶ。



――真なるリバースの剣は未だ封印されたままの筈。もしも封印を解く前に戦われてしまえば、あの方はラモー・ルーに勝てない!



 この若者の名はライケ。

 ラル王国第一衛士であり、本来なら王女の傍から離れずに守護すべき者。

 ところがライケはユリアや侍女達の救出を二の次としか考えていない。ラモー・ルーの宮殿に単身で乗り込んできた理由は伝説の剣に選ばれた
 少女との接触だ。

 その過程でユリア達を救出できなければ見捨てることも辞さない覚悟を決めていた。

 リバースの剣に選ばれた少女はおそらく封印を解く方法を知らないだろう。

 ゴモロスの神殿で出会った時の状況からして、少女は水晶鏡から告げられる真実を見ていない様子だった。

 故にラモー・ルーと対峙するまでに伝えなければならず、僅かな遅れが取り返しのつかない事態を招く。

 ゴモロスの神殿で黒騎兵の襲撃があったとはいえ、先に少女を向かわせたことがライケにとって痛恨の極みなのである。



――だからこそ急がねば! 多くの者を見捨てることで得た唯一の希望を失うわけにいかない。

 散っていった者達のためにも、あの方に勝利して頂くためならば私はどこまでも非情になってみせる!



 これまでユリア王女の救出に動かなかったことにしてもリバースの剣に選ばれし勇者の捜索を優先した為であり、打倒ラモー・ルーを第一にと考えたが故。

 なによりもラル王家の血筋を守るために十数年も欺き通した秘密を侵略者に知られることを恐れたからだ。

 素性を隠す身なりで隠密行動をしているのもその為であり、ユリアの口から秘密が漏れることはないという信頼があってのこと。

 彼女の人間性を知り尽くしているからこそ私情を挟まず、ゴモロスの神殿で出会ったキャロンという名の少女にリバースの剣の封印を解く方法を伝えるべく
 先を急ぐ。

 憂国の衛士にとって長い夜はまだ始まったばかりだ。















「ほう、なかなかしぶとい。あれを喰らってまだ生きているのか」



 石壁に激突して倒れた小さな竜を見据えて漆黒の魔術使いが感情なく低い声で呟く。

 強烈な一撃を見舞っておきながら先程までの怒りをどこかに置き去ったかのように致命の追撃を与えようとしない。

 それでもキャロンにしてみれば、ペルルの安否が気懸かりでならなかった。

 四肢を束縛されて駆け寄ることができず、地に伏せたまま動かない相棒の痛々しいしい姿に大粒の涙を零して呼びかける。



「ペルル起きて! お願い、返事してーーーーっ!」



「まだ死んではおらんから安心するがよい。フフフ、なるほど……あの小僧は始末するよりも生かしておいた方が面白そうだ」



 キャロンにラモー・ルーの声は届いていなかった。ピクリとも動かないペルルが気になって意識するどころではなかった。

 同じ囚われの身のユリアが「なんて酷いことを――!」と、冷酷に笑う魔道士を非難したことすら聞いていない。

 ペルルの身を案じるあまりに我を忘れて必死に四肢の戒めを振り解こうと足掻くと小ぶりの双乳が慎ましく揺れ動く。

 その姿を見る黒衣の魔術使いがリバースの剣を手にすると紅い眼を細め、悪辣な思考を隠さずにあえて口にした。



「意識を失ったままというのは面白味に欠けるが、助けに来た仲間の前で嬲られるのはこれ以上のない屈辱であろう。

 それでこそ蜜に旨味が増すというものだ」



 卑猥且つ獰猛な視線が美少女剣士の意識に突き刺さる。

 ペルルに駆け寄りたい一心で取り乱していたキャロンであったが、邪な眼で視姦されると忽ち全身に鳥肌がたつ程の悪寒を感じてしまう。

 否応なく反応させられて思わず瞳を見開いてしまい、恐々としながら暗黒のローブを見ると背筋にゾクリとしたものがまた駆け上がる。

 相棒に酷い仕打ちをした元凶には怒りの感情が既になく、欲望に満ちた笑みさえ窺えるのが不気味でならない。

 卑猥な感情を憚らずに浴びせてくる魔道士はキャロンが感じた通りに凌辱者としての顔つきになっていたのだ。



「――な、なに!? またヘンなことしようって気なの」



「自力で心を呼び起こすとは少々侮ったか。流石はリバースの剣に選ばれた剣士と言いたいところだが、頼みの剣がなくてはどうにもなるまい」



「だったらそれ返して。ペルルがせっかく持ってきてくれたんだから!」



「いいだろう。但し、貴女が私の物になった後だ。この剣の力を引き出すために……ん!? なんだ、伝説の剣とやらはとんだナマクラだったか」



 何かに気がついたラモー・ルーをキャロンは気丈にも怪訝な面持ちで睨み続けたが、その表情が目の前で剣をへし折られたことで驚愕に染まる。

 伝説の剣がいとも簡単に折れてしまった衝撃と、不要と言わんばかりに折った相手の意図が理解出来ずに叫ぶ少女は事態をよく飲み込めていない。



「え~~~~っ! なんで折れるの、なんで折っちゃったのよぉぉっ!」



「もうこんな物に用がなくなったからだ」



「だからって折ることなんてないじゃない。勿体ないわ」



「力を持たぬ剣など持っていたところで邪魔になるだけ。

 長い年月で力が失われたのか、あるいは伝説が単に誇張されて広まっただけかは分からぬが、不要となれば当然のことだ」



 刀身半ばで折れた剣を放り捨てる態度を恨めしそうに見つめるキャロンは無意識に柄を掴もうとした。

 必死に伸ばそうとした手が届くこともなく、折られた剣が床を転がってカランカランと金属音を響かせる。

 すぐにガシャンと砕けた音がしたのは、ラモー・ルーが強大な魔力をもって刀身側を踏みつけてしまったことによるものだ。砕かれた長い刃が
 塵となって霧散していく。



「となれば、この星で必要なのは魔力を回復させる乙女の蜜の他にあるまい。思わぬ邪魔が入ったが、さて……」



 紅い双眸が妖しく輝く様を見たキャロンは咄嗟に目を瞑って顔を背ける。

 また魔術に掛けられると思っての判断だったがラモー・ルーの思惑は違った。キャロンを拘束したまま己の傍に招き寄せたのだ。

 そして少女は自分の判断を誤ったと悟った時、恐々と目を開いた先には黒いローブに身を包んでいた姿がまた魔物のような姿に変貌していた。

 先程までよりも禍々しいまでに頭部の形状を変え、増やした腕の数も比ではない。

 人の手型をした腕以外にも触手のような形状のモノまで無数に生えさせ、より醜悪で凶暴じみた姿になっている。



「フフフ、術は解けても身体はまだ鎮まりきっておるまい。中途半端に終わっての生殺しはさぞ辛かろう」



「そんなことないもん! 彼方のような変態と一緒にしないで」



 きっぱりと否定してみせたキャロンであったが身体の疼きは自覚したままだ。

 悶々とした気分が抜けきらず、それをペルルに対しての非道な仕打ちをしたラモー・ルーへの怒りだと思い込もうとしていたに過ぎない。



「ほう、では身体の方に訊いてみるとしよう」



「やだぁぁっ! 近寄らないで!」



 醜悪な巨躯が一歩踏み出すだけで視界いっぱいに広がる気味悪さは先程の魔物のような姿とは比べものにならない。

 しかも形が違う大小様々な触手まで視界いっぱいに飛び込んできたのだ。

 縦長の大きな顔が口を開いてまた長い舌まで伸ばしてくる。取り巻くように伸びてくる肉色の触手も一緒だ。

 そんなモノで触られたくないとキャロンは嫌悪を顕わに罵る。



「ヘンなのでまた触ろうとしないでこの変態っ! 彼方ってエッチなことしか考えられないの! バカ、バカ、バカぁぁっ!」



「いつまで悪態をついていられるか見物だ」



 嫌がる態度がラモー・ルーの嗜虐心を煽っているなどキャロンには想像もつかないことだった。無闇に手足を暴れさせて拘束から逃れようと足掻くが
 事態の好転は望めない。

 無力な少女にとって精一杯の抵抗も虚しく、柔肌に触れてくる無数の手や触手の妨げにならなかった。長い腕や触手が一斉に群がってくる。

 滑った感触が全身をところ構わずに触れてもキャロンには払いのけることができない。



「いや~~ん、触んないでって言ってんのにやだぁ!」



「なんとも若さに満ちて触り心地がいいことよ。小さな胸もよく弾む。フフフ、乳首がまた硬くなってきたぞ。身体は正直だな」



「こんなことされたって、ひゃっ! 擽ったい、だけ……はっ、ふああぁっ!」



 おぞましく嫌悪でしかない筈のモノに小ぶりの双乳を揉みしだかれてキャロンの背筋がピクンと跳ねる。

乳首を捏ねまわされると忽ち硬く尖って自己主張しだす。

 全身を撫でられての掻痒感を伴う心地よさとは違い、双乳の蕾を弄られると胸の奥にまでビリビリと響く。

 勃起しきった乳首を責められる少女はもはや悪態をつくどころではなくなった。手の形をしたモノに苛められたと思いきや、今度は滑った感触に
 吸いつかれて声が甘く上擦る。

 触手が先端を開いて咥え込んでいたのだ。強弱つけて締めつけながら吸い引っ張る刺激に叫ばずにいられなかった。



「おっぱいダメェェーーーーっ!」



 いくら拒絶の意思を示しても肉体は正直な反応を示す。手足の悶えは今となっては抵抗ではなく、感じてしまって無意識に動かしているものだ。

 無毛の股間の小さな割れ目はラモー・ルーが触れずともまた開きだし、濃厚な牝の匂いをプンプンとさせて蜜を滴らせている。

 蜜口を覗かせてしまうのは女としての悲しい性(さが)。生殖本能が意識に関係なく男を求めてしまったのだ。



「やめっ……や、ああぁ……おっぱい、ビリビリして……きちゃう……きゃふっ!」



 心ではどう思っても、肉体は再び刺激されて感じてしまう。

 脇の下や内腿を触手に舐められて擽ったいように感じても、それがすぐに快楽へと変わっていく感性にキャロンの精神が追いつかない。

 恥辱的な行為を受けていながら肉体は意識を無視して被虐の悦びとして反応してしまう。二の腕や臍まで弄られての快感が意識に流れ込む。

 一方的に快楽を与えられて自身の声に艶が帯びていることを、ポニーテールを振り乱す金髪の少女には容認できるものではない。心とは違う反応をする
 身体が恨めしく思う。



「お臍舐めちゃやだぁ。擽ったいのに、どうして……こんな……もう、やめてぇぇっ!」



「どうした、肌を触られるのが嫌なのではないのか?」



「嫌に、きまっているじゃな、あっ……ひゃうっ!」



「乳首をこんなに硬くしおって。ほれ、言いたいことがあるならはっきりと言ってみるがいい」



「おっぱい、そんなに強く、すっちゃ……いや……あっ、あんっ……だめ……

へんな、感じっ……くっ、んああぁ、あっ、はああぁぁ、やああぁぁん」



「なんだ、言えないぐらいに感じてしまうのか。伝説の剣士とはとんだ淫乱娘のようだな」



「違っ! やああっ、や、やめっ……感じ、て……なんか……あ、あたし……くはああんっ!」



 意地悪な問いかけに反論の言葉をうまく紡げないどころか、感じた声音を押し殺すこともできない悔しさでキャロンの目尻に涙がにじむ。

 乳首の一方を今度は長い舌が舐めてペチャペチャと卑猥な音を鳴らし、舌を取り巻く肉触手が乳肌を弄りだしても罵ることができないのが
 屈辱でならなかった。

 しかも嫌悪でしかない行為に気持ちいいと感じてしまう自分が情けなく、悔しくてならなかった。



「嫌だというわりに可愛い声を出すではないか。素直になればすぐ楽になれるというのに、愚かな」



 見え透いた挑発を挟んで執拗な舌技が硬くしこりきった尖りを弄ぶ。白桃色の蕾が唾液にまみれて赤みを増していく。

 それ以上に頬が赤らみ、吐息の熱が増してはここで如何なる言い訳をしたところで快楽を感じている事実を否定することはできない。

 故にキャロンは否定の言葉を頭の中で浮かべても声にしてしまう意欲が湧かず、小さな竜の意識がまだ戻らない様子を横目にしながら涙を零す。



――悔しいよぉぉ。こんなエッチなことされて嫌なのに、やめて欲しいのに……なんで感じちゃうの?



 この辱めはより苛烈になっていくと本能的に悟ったからこそ心が挫けそうになって助けを求めてしまう。

 恥辱に快楽を感じてしまう自分がこの先どうなってしまうのかという不安が弱気にさせる。



――ペルル、助けて……お願い、早く起きて。このままだともっと酷いことされちゃう



 意識のない相棒に助けを請うキャロンの心情はラモー・ルーに筒抜けだったようだ。含みのある笑みを浮かべながら少女の顔を覗き込む。



「よかろう。認めたくなければそれでもいい。素直にならなければいつまでも辛いだけだ」



 乳首にむしゃぶりつく長い舌を滑らして肌をなぞる動きにキャロンの肌が泡立つ。

ゾクゾクとさせる滑った肉の感触がゆっくりと這いながら下腹部へと迫る。

 キャロンが身震いした時にはなだらかに盛り上がった恥丘に到達し、何をされるのかと思った時には包皮から僅かに覗く肉芽を弾いてきた。



「きゃっ!」



 小さな悲鳴を無視して伸びた太い舌の動きは止まらない。愛蜜が滴る膣口を穿り、掬い上げるように舐めてくる。

 そこへ舌を取り巻く肉触手達が取り合うようにクリトリスを弄りだす。荒々しさに繊細さを織り交ぜた動きに肉豆がみるみると尖って包皮を剥いていく。



「んんっ、や、やああぁぁ、そ、そこ……そこ、ダメぇぇ! くはああぁぁ、あんっ、やだぁぁ」



 女陰への強い刺激に堪りかねたキャロンの腰がカクカクと震えだす。両脚が閉じようとして開くのは無意識の反応だ。

 包皮が捲れて硬く尖る突起を執拗に刺激されて美少女剣士は悶え、嗜虐の魔術使いは長い舌を器用に動かして蜜を掬い取るように膣口を舐める。



「はぐっ、んっ……そ、そんなとこ……舐めない、で……もう、舐めちゃ、やっ、あっ、ふぁ、ああぁっ!」



「フフフ、それにしても濃厚な味よ。この旨味を存分に味わうにはやはり……」



 ラモー・ルーの意図するところをキャロンは気にする余裕がない。全身をまさぐられながらの乳首責めに加え、敏感突起に群がる。

 細長い肉色の触手達に苛められ、漆黒色の太い舌に蜜口を抉るように掬い舐められては意識を傾けるどころではなかった。

 当然ながら王女の声も今の彼女には届いていない。いや、むしろ悲鳴じみた叫びに羞恥を煽られてしまう結果でしかなかった。



「剣士さまぁぁっ! どうか最後まで諦めないで。リバースの剣は、リバースの剣は……」



 ユリアが口にするリバースの剣はすでに折られて鉄屑と化した。なのに伝説の剣のことを今更どうしてとキャロンには疑問しか湧いてこない。

 辱められて喘ぐ姿を見らていると過剰に意識してしまうからこそ言葉の意味を理解しようとはせず、被虐に恥じる心は官能の昂ぶりをより感じてしまう。

 そんなことよりもう見ないでほしい。辱められて喘ぐ自分の姿から目を背けてほしいと切実に願わずにいられなかった。



――見ないでぇぇ、もう見ないでくださいよぉぉ。こんなの、恥ずかしすぎるよぉぉ



 ピチャピチャと卑猥な湿った音は王女のところまで聞こえているかもしれない。

 恥ずかしいところに伸びた舌の動きは魔物と化した魔道士の背中で見えずとも、その蠢きは十分に想像できるだろう。

 自身を余計に悩ませるだけの妄想を膨らますキャロンはラモー・ルーの下腹部が盛り上がっていることに気がついていない。

 粘液にまみれた漆黒の肉瘤がうねりながら伸び、その先端部分が亀頭を模して膨れあがっていく。一度は純潔を奪おうとして果たせなかった

先程とは違い、再び隆起し始めた魔道士の生殖器はより太く、狙いを定めてピンと張り詰めると強靱なまでの硬さまでもが窺える。

 闇より昏い色をした肉茎をより醜怪にさせているのは無数の小さな穴だ。息づくように開いては窄まる様は見るに耐え難い。

 幸か不幸か、それはまだキャロンの視覚の外。

 しかし事の成り行きを見守るユリアは別だ。極太の長い逸物を目の当たりにして顔面を蒼白に染め、被虐の美少女剣士に呼びかけ続ける。



「希望を失っては駄目です。剣士さま、どうか……どうか気を強くもって」



 キャロンに諦めるなと諭すつもりなのだろうが結果的には逆効果だ。裏返った声がより絶望的に聞こえ、見ないで欲しいという心情を
 逆撫でているに過ぎない。

 ユリアと違ってキャロンの心情を理解しているであろうラモー・ルーはその呼びかけを滑稽だと言いたげに嘲笑う。



「フフフ、諦めの悪い王女よ、そこでじっくりと見ておれ。唯一の希望であった剣が折れ、そして担い手となった剣士もまた私の物になっていく様を」



「その方を早く離しなさい! 私が代わりになります」



「何をたわけた事を……。貴女は闇の女王への生け贄となる身。そしてこの娘は私の魔力を全盛時へと回復させるための性奴隷となる。

 従順となったあとも股座から滴る蜜が枯れるまで存分に啜ってくれようぞ」



「私をどうしようとも構いません。生け贄なり何なりしなさい。ですがその方をそれ以上辱めることは許しません」



「何とも気が強いことよ。流石はラル王家の王女。しかしこの娘が堕ちてしまえば強がっていられるかな」



 会話に夢中になっている為か、ラモー・ルーの長い舌が取り巻く肉触手と共に無毛の股間から離れる。

 少しばかり周囲に意識を傾ける余裕が生まれたキャロンがこれでようやく大事なところを舐められる行為だけは終わったと思ったのは一瞬のこと。

 異様な気配を感じた彼女の目に醜悪な姿をした粘液まみれの物体が飛び込んでくる。



――な、なんなの!? これって、まさか……!!



 闇色の大蛇とおぼしき物体がうねりながらゆっくりと股間へと迫る。

 顔を背けようとしたが金髪のポニーテールを背後から長い手に捕まれてそれも叶わず、美少女剣士の唇がなわなわと震えだす。



「怖いか。そうとも、察しの通りこれが今から貴女の股間を串刺しにしてくれる。蜜の極めとは即ち、穢れなき乙女の純潔。

 破瓜の血が混じった蜜がこの私の魔力を高めてくれることだろう。もちろん淫らになった蜜も味わい深いものになるだろうがな」



「や……やだ……そんなの、やだぁ」



「フフフ、術が解けねばそのような恐怖を味あわずに済んだものを。ならば今一度術を掛けてやらんこともないがどうする?」



 慈悲を与えるかのような物言いであっても結末は何一つ変わっていない。そしてこの選択は一つしかないとキャロンにすり込んできたのは漆黒の怒張が
 迫りつつあることだ。

 考える時間を与えておきながら熟考させる猶予は与えてくれない。先端がもうすぐ股間に触れようとしてくる。

 キャロンは咄嗟に選択した答えを口にしかかったところに別の声が割り込んできたのはラモー・ルーにとっても予想外のことだったらしい。

 触手じみた長いペニスの動きが陰裂に触れる直前で止まる。



「答えては駄目です! それこそラモー・ルーの悪辣な罠 。たとえどのような目に遭っても最後まで希望を捨ててはなりません」



 涙ながら訴えてくる声に反応したキャロンが出掛かった言葉を飲み込む。

 僅かな沈黙で全身に這う触手達の蠢動する音と少女の甘い息遣いだけがこの空間に広がったが、すぐに野太い怒声が全てを掻き消す。



「王女は黙っていてもらおうか!」



「黙りません! 何度でも言います。穢すなら私を穢しなさい」



「ええい、五月蠅いっ!」



 ラモー・ルーの怒声と共にユリアの足元に闇が迫る。

 その様が見える位置に移動させられたキャロンが目撃した時には王女の足元に広がった闇のうねりの中から触手が飛び上がって可憐な口を塞いでいた。

 苦悶の表情を浮かべて呻くユリアに対して触手は容赦ない。ただ黙らせるだけではなく、喉の奥深くに潜り込んで突き上げていた。



「んんっ、んっ、んぶ、んぶぶぶっ! ラモー……んはっ、ぐぉ、んんっ、げほっ、げほっ! その方をはなっ……んぐ、んあ、んぐぐ、んーーーーっ!」



「黙っていればいいものを調子に乗りおって。王女殿にはしばらくそのままでいてもらおうか」



 繋がれた鎖をジャラヤラと鳴らして悶える様にまったく見向きもしないラモー・ルーの視線はキャロンの愛らしい顔立ちを決して逃さない。

 キャロンもまた紅い双眸から浴びせられる視線を感じとっているからこそ王女の身を案じても声にすることができなかった。

 それ以上に彼女の心を乱しているのが身体の疼きと火照り。

 太いモノで股間を串刺しにされる恐怖に怯えながらも、未だ拭うことができないもどかしさに戸惑う自分の感情が理解できなかった。

 全身を弄られての恥辱と快感は金髪の美少女を発情させただけで済まさず、心を掻き乱していたのだ。



――王女さまが酷い目にあっているに、あんなの挿れられたくないのに、なんで!?



 ポニーテールに結った長い髪を掴まれ、強制的に自身の股間を見せられる少女の戸惑いは非道なる魔道士には理解の範囲だったのだろう。

 陰部に触れる直前で止まった太い逸物を見せつけるようにくねらせて挑発してくる。

 顔を顰めて嫌悪を露わにしたキャロンの表情がラモー・ルーには愉快でならないかのようだ。

 王女への口辱ですらそのための演出であるかのように紅い双眸を細めた。



「フフフ、先程の問うた答えを聞かせてもらおうか。心を開いて術に掛かりきるか、否か。返答を誤れば王女のような目にあう」



 結い髪をまたグッと引っ張られたキャロンの目にユリアの姿が飛び込んでくる。

 触手を咥えさせられて唾液まみれの顎が跳ね上がり、吊り上げられた両腕を暴れさせて苦しげに呻く様はまるで誤った選択をした末路のようだ。

 さながらキャロンにそう思い込ませているかのように王女への口辱は激しいものだった。咽せて咳き込んでも休まずに続けられている。



「ん、んんっ、あむっ、ふあぅ、ふぁ、あぐっ! んご、んむ、んああぁ、はっ、げほっ、げっ、ごえっ! あっ……あふあぁ、んっ、んんっ、んふうぅぅ」



 注挿の勢いで何度も顎が跳ね上がっては頭を前後に揺らされる姿はとても直視できるものではない。湿っぽい音まではっきりと聞こえれば尚のことだ。



――酷い、あれじゃ王女さまが息できないじゃない



 口いっぱいに頬張らされ、眉間に深い皺を刻むほどに目蓋を閉じて涙を流す王女の哀れな姿を見せつけられてはそう思い込んでも無理はない。

 端(はた)から見ればいずれ窒息死しかねない注挿であるがラモー・ルーにユリアを殺すつもりはなく、口辱に身悶える王女の頬が赤らんでいることを
 キャロンは見逃していた。

 呻き声が甘く響いていることを分からず、モジモジと擦り合わせている内腿を愛液で濡らしていることも気がついていない。

 被虐の悦びというものを知らない彼女にとってはただ拷問に苦しんでいるようにしか見えなかった。



――あたしもこのままだとアソコにあんな事されちゃうの?



 自身もまた純潔を散らされようとしている状況も相まって、動揺する心は極限状態にまで追い込まれて無防備にされてしまう。

 快楽か苦痛かという選択に隠された意図を見抜いたユリアが口を挟んだ結果が災いしてキャロンの心を丸裸にしてしまった時だ。

 魔物と化したラモー・ルーの鋭い紅眼が少女の心の隙をついて不気味に輝く。



「王女の思わぬ邪魔がまさか手助けになるとはな。フフフ、今度こそ心を完全に封じ込めてやる。

 いや、封じ込めるというよりも意のままにするというべきかな」



「髪をそう乱暴に引っ張ら……な……あぁ……ぁ……」



「淫らな気分が高まれば、蜜の溢れもまた然り」



「い……いや……」



「もう遅い。それに先程より魔力をこめているのだ。決して逃さぬぞ」



 捕まれた結い髪をまた引っ張られたキャロンは輝く双眸から目を背けることができず、咄嗟に目蓋を瞑ることもできなかった。

 魔力の浸透に心は逆らう間も与えられずに侵食され、少女の意識からペルルと王女の存在が真っ先に消えていく。

 そして恐怖や戸惑いといった感情が表情から取り払われていくにつれて愛らしい瞳から光が奪われていった。



「これで貴女は私に逆らう気をおこすことは二度とない。さあ、身も心もすべて捧げるのだ」



 忌むべき魔道士の従順を促す声が意識に入り込んでもキャロンに跳ね返す感情が涌かない。

 何度も頭の中で響き、それが当たり前のことだとすり込まされてコクリと頷いてしまう。



「はい……あたしは……彼方の、ものです」



 従僕の宣言をしていながら金髪の少女は一滴の涙を零す。意識を支配されたキャロンは自身を疑った。

 口を、耳を、抗おうとしない身体を、そして意識までもが自分を裏切っている。

 この宣言が引き金になったのか、華奢な矮躯の感度が増した。全身を撫でまわす無数の手や触手の動きに腰をくねらせて憚りなく嬌声が漏れだす。



――違う、そんなこと思ってない!



 どう思っても身体は如実な反応を示してしまう。小ぶりな胸肉を揉まれ、

その頂きに鎮座する蕾を弄られると胸の奥までジーンと痺れて否定する心を解そうとしてくる。

 堕落への誘惑は甘く切ない響き。残された理性を保とうとしても、今のキャロンには押しとどめることはできない。



「まだ苦しそうだな。またしても術が掛かりきっていないか。なら、それはそれで面白い。その強情さがいつまで保つかな。瓦解するときが楽しみだ」



 心の封印と支配が完全でなくてもラモー・ルーにしてみれば些細なことだったのかもしれない。いや、ここにきて予期せぬ出来事の連続を余興として
 楽しんでいるかのようだ。

 触手のような長い極太の肉棒がくねりながら小さな肉裂に触れる。

余計な触手達を追い払った先端が膣口を抉るように擦り、尖りきった肉芽をその勢いをもって弾く。

 一度ならず繰り返し続けられる女陰への責めはそれだけでは済まされない。闇色の肉茎に点在する無数の小さな穴が吸引活動による収縮で敏感粘膜に
 別の刺激を加えていたのだ。

 擦過と吸引による責めは充血しだした肉芽にも及ぶ。亀頭を模した先端が弾いてきた後、闇色の肉茎に擦られながら点在する小さな穴によって
 吸い引っ張られる。



「ひああぁぁっ! ふあっ、くゎああぁぁ、くひぃぃーーーーっ! は、はげしっ……あ、ああぁぁ、やああぁぁーーーーんっ!」



 敏感突起を襲う強い刺激に悲鳴とも嬌声とも受け取れる絶叫をあげるキャロン。何度となく割れ目を擦られて滴る蜜が飛沫をあげる。

 粘膜襞への摩擦は下腹部を熱く痺れさせ、その広がる余波は四肢にまで及ぶ。ブルンと振るわす背筋に電撃が駆け上がって脳髄に突き刺さる。



「ふあ、あっ、んあっ、あっ……ああぁぁ、んああ……ひっ、んうっ、くっ……んっ、あぁ、んひっ」



「ほうれ、気持ちよくなってきただろう」



「は、はい……きもち、いぃ……です……う、んあ、あっ、いいっ、そこぉぉ!」



 本当はそんなこと思っていないと言いたいキャロンであったが、反発する心が淫らな感情に染まっていく。

 卑猥に聞こえる淫音にまぎれてジュルジュルという微かな吸引音が聞こえ、

溢れさせる愛蜜を啜られていることを自覚させられると歯止めが効かない。



「アソコが……大事なとこ……とても、気持ち……いい、です……」



 疼きを持て余す肉体を慰めたいという思いが本音かどうか自身ですら分からなくなった少女の表情は緩み、光が消えた瞳は虚ろなままだ。

 問いかけてきた人物が誰なのかとは気にならず、意識に入り込んでくる声に従うことを当たり前のことだと思い込まされていく。



「もっと気持ちよくないりたいか?」



「なりたい……です……もっと……ふゎああぁ、んはっ……あぁ、ああん」



「だったらどうして欲しい?」



「それは……あたしの……や、あぁぁ……ん、あぁぁ」



 少女の言葉は躊躇いがちにそこで止まった。魔術の影響を受けながらも理性の欠片が最後の一線を越えることを許そうとしなかったのだ。

 身体は屈してしまい、心もほとんど支配されても純潔だけは守りたいという乙女心だけはまだ消えずに残っている。

 しかし征服者としての威厳を捨て凌辱者となった魔道士にしてみれば、それこそ嗜虐心を擽られてしまったのだろう。

 術にまだ掛かりきらないことに苛立つことなく、紅い双眸は余裕をもって笑っていた。



「フフフ、ここまで術に逆らえた者は一人もいなかったというのに、その強情さは大したものよ。

 名は確かキャロンといったか。伝説の剣士キャロンよ、貴女を屈服させるには生半可なことでは無理のようだ。ならば……!」



 陰裂に割り込んで粘膜を掻きまわす漆黒のペニスが突如として動きをとめて先端を蜜口に宛がう。

 それに呼応したのか、小指ほどの太さしかない触手が再び口を開いて尖りきった陰核を粘質な音を響かせながら飲み込む。

 いつの間にか同じ細さの触手の群れが殺到して大陰唇を引っ張っては揉みだし、肉豆を咥え込んだ触手は激しく吸い絞って責めたてる。



「ふぁあわわ、んひゃああぁぁ! やっ、ああっ、んひっ、ひぃ、いっ、ああぁ、ひゃああぁぁ、ふゎああぁぁ、んっ、ひううぅぅ、んふああぁぁっ!」



 全身を震わせて仰け反るキャロンが突きだした胸を人型の手が鷲掴んで揉みしだき、

その掌部分に生えた産毛のようなものが勃起乳首を摘まんでは捏ねだす。

 そして膣口に宛がわれた漆黒の肉棒は挿入せずとも、震動の如きうねりをもって亀頭を浅く食い込ませて少女の壊れそうな理性を砕こうとしてくる。



「どうした、まだ答えられんか?」



 ラモー・ルーがあらためて問うてみてもキャロンの口から漏れるのは嬌声の叫びのみ。

 瞳は依然と虚ろに意思の光はなく、強すぎる刺激に頬を強張らせ、震える唇の端から涎を垂らしている。

 木っ端微塵に砕けそうな理性に必死で縋ろうとする金髪の少女のささやかな抵抗は強制的に与えられる快楽によって限界に近い。それは彼女自身が
 否応なしに自覚している。



――ダメ……ヘンになっちゃう!



 本能的に屈してはいけないと思いながらもそれが叶わないという諦めが小さな理性に亀裂を生じさせる。



「んああぁぁ、いいぃぃ、きもちいいぃぃっ! んはぁぁ、はぁ、ひううっ、んふぅ、んん、ああぁぁ、あうっ、んっ、くふううぅぅ」



 悦情の叫びが自分の口から飛び出し、それこそが本音で拒絶する気持ちが偽りではないのかと思いはじめるキャロンの理性にまた大きな亀裂が
 生じてしまう。



――嫌なのに、やめて欲しいのに。なのにいっぱい感じちゃうあたしってエッチで変態なの? そんなの嘘よ、絶対に違うわ!



 自分自身への疑いが心の隙になることを少女は分かっていない。

 魔力に侵された精神は更に蝕まれてしまう。一度でも亀裂が生じれば脆く、心の核心は理性という殻を剥がされていく。



――でも……エッチなことされちゃうと気持ちいい。頭が真っ白になりそうで何もかもどうでもよくなっちゃいそう



 快楽に身を委ねて楽になりたいという衝動こそ官能の焔を焚きつけ、やがて堕落が待ち構えている。キャロンはその感情に流されつつあった。

 膣口に宛がわれているラモー・ルーの肉棒がより深く食い込んだのは他ならぬ彼女自身が腰を揺すってしまったことによるもの。

 小刻みに波打つ触手ペニスの振動に合わせて動かしている自覚もあった。

 黒光りする逸物を自身の愛蜜で濡らしてネチャネチャと卑猥で粘質な音を大きく鳴らしてしまうことに恥じらいながら、快楽を得たい欲求に歯止めが
 効かないジレンマに苛立つ。



――いけないのに、こんなの駄目だって分かっているのに、アソコからエッチなお汁がいっぱい出ちゃう。恥ずかしいのに止まらないよぉぉ



 硬い肉の感触から抗おうと思う反面、ちっぽけな理性を煩わしく思う感情が芽生えて腰の動きが大胆になっていく。

 それこそ掛けられた魔術が心の深層にまで及んできた影響であった。

 発情しきった肉体が少女をより淫らな気分にさせてしまう。

 昂ぶる感情が激しく燃えさかるにつれて膣穴に食い込む肉棒をこのまま埋めてしまいたいという悦欲が心を支配していく。

 膣口を解されるにつれて慎ましいアナルをヒクヒクと囀らせてよがり、発情しきった身体をもてあますキャロンは深い快楽を求めてしまう。



「大事なとこが、いっぱい……擦れ、んはぁ、あんっ! もう、ダメ……

我慢、でき……っ、ああっ、やああんっ! ふああぁぁ、あぁ……うっ、はああぁぁ」



 蜜口に食い込む極太の肉竿から与えられる振動で蜜の飛沫が派手に飛び散る。腰を跳ねさせては淫らにくねらすとラモー・ルーの顔面にも
 降り注ぐほどの勢いだ。

 細い触手達に散々弄られた肉芽は充血しきって真っ赤にそまり、より敏感になって熱く痺れさせてくる。



「あたし……あたし……ヘンに、なっちゃ……くああん、やだぁ、敏感なとこばかり……はあぁぁ、ああんっ!

 ビリビリ痺っ……れる、のに……いいのぉぉ、気持ちいいぃぃっ!」



 高みへと押し上げておきながら絶頂を与えてくれない刺激に耐えかねるキャロンの表情は蕩け、魔術の影響が心の隅々に浸透していく自覚がないまま
 反発する感情を失っていく。

 肉裂の緊張はすっかり解され、食い込む亀頭への締めつけが膣奥へ飲み込もうとしているみたいだ。

 くねらす腰使いにしても擦りつけようとしていた動きが今では自ら埋めようと縦に振っている。亀頭を逃がすまいと挟んでいる陰唇が振動で震えながら
 愛蜜の飛沫を撒き散らす。



「でも……アソコが、疼くの……いっぱい……硬いのが、当たって……こんなっ、あっ、くふああぁ、っふはあぁぁん

……そんなに、グリグリしちゃ、あんああぁぁ、ダメェェーーーーっ!」



 陰核への刺激で跳ね上がった腰が蜜口に振動を受けることで僅かに沈みかけては浮き上がる。消えかけの理性が働いて純潔を散らすまいとする
 無意識によるものだ。

 しかし快楽を欲する感情が上回ってしまい、擦れる亀頭を飲み込もうとしてしまう。

 愛蜜と触手ペニスの粘液が混ざり合わさっての粘り汁が肉の摩擦を滑らかにしていくにつれ、絶頂を味わえぬ昂ぶりが股間を余計に疼かせてくる。

 その動きをラモー・ルーは嬉々としながらじっくりと観察し、振動させる肉棒を埋めずに焦らす。

 ただ彼自身も悦情を抑えきれない様子だ。慎ましい美乳を乱暴に扱い、頬を舐める長い舌を首筋や鎖骨の辺りに這わしてどこか忙しない。

 ほんのりと柔肌に滲む汗を舐めとり、また肩からうなじへと這いずる。



「フハハハッ、我慢すればする程に辛くなる。その苦しみから解放されたければ私の術に抗わないことだ」



「そ、そんなこと……んはっ、はぁ、はぁ、言われても……あたし、どうしたら……はうっ、きゃはああぁぁっ!」



「簡単なことだ。この快楽を素直に受け入れるだけでいい。私のモノを求めるのだ。たったそれだけですぐ楽になれる。

 苦痛が一切無い快楽の境地へと導いてやろう」



「それを……大事な……とこ……はふん、ああぁ、ふあうぅぅ、ダメっ……はぁ、はぁ……あんっ、ああん、いやぁぁん」



 悦情に流されそうになりながらも堪えるキャロンの理性は風前の灯火だ。膣口からとめどもなく愛蜜を溢れさせ、小鼻をひくつかせて涎を垂らす表情は
 発情しきった牝そのもの。

 あどけなさを残した顔だちを艶に染めた少女の肉体は存分に火照り、滲み出る汗からムンムンとした甘酸っぱい芳香を漂わせている。



「ほうれ、ほれほれ、どうしたまだ答えられぬか? それとも、あまりにも気持ちよすぎて言葉が出ぬのかな。

 ここはずっと欲しい、欲しいと言っているというのに」



 凌辱者の問いがキャロンには反響するように聞こえてならない。心の奥にまで浸透していくような感覚が波紋となって押し寄せ、やがて野太く低い声が
 自分の声に変わっていく。

 まるで自分自身に問われているかのような錯覚に陥り、口調まで同じような気がしてならなかった。



――あたし、エッチで変態じゃない。普通の女の子だもん



 否定しても恥辱に喘ぐ声は甘く切なく、身体の疼きに耐えかねている。

 快楽をありのままに受け入れてしまえばどんなに楽だろうか。たとえ純潔を失うことになろうとも、昂ぶる気分は嫌なことを
 すべて忘れさせてくれることだろう。

 しかし初めては好きな人に捧げたいと思うのが乙女心というもの。犯されて奪われるのはまっぴらご免だという気持ちは偽れるものではない。



――なのに気持ちよくて、アソコがウズウズして、止まんなくて……あ、熱い……身体が、熱いよ



 太い肉の楔を陰裂に押しつけられて愛蜜が粘り気を帯びている。薄らと濁りだして本気汁を溢れさせているのは感じている証。

 振動しながら食い込む漆黒のペニスの逞しさを感じ、両の眼(まなこ)に焼きつけてゴクリと生唾を飲み込む少女の心は淫らな感情を抑えきれない。

 穢されたくないという想いを飲み込もうとしている。

 それこそラモー・ルーが重ねて問いかけた本当の理由であり、心の陥落へと導く罠であった。

 魔術の効果はまもなく心の隅々にまで浸透していくことだろう。完全に掛かりきってしまえば最後、キャロンはラモー・ルーの呪縛によって支配されて
 しまうことになる。

 永遠なる従僕にして性奴隷と化す瀬戸際にまで追い詰められていたのだ。



「もうすぐだ。グフフフ、最後の一押しは蜜の極めを頂くことで果たさせてもらおうか」



 陰湿な笑い声が辺りに響き渡ってもキャロンに反応する余裕はない。

 金髪のポニーテールを掴む手が離れても、意思の光が消えた瞳をうっとりとさせて陰裂を貫かんとする漆黒の肉棒を見つめたままだ。

 純潔を奪われる宣告を受けて嘆く感情を露わにするどころか期待感すら窺える。



「そうか、これが欲しいか?」



「ほしっ……や、あぁ、んっ、んふ……ダ、ダメ……もう……はぁ、はぁ……あ、あたし……

がまんっ、できっ……ん、んんっ、くるっちゃ、うっ……ひっ、ひううぅぅっ!」



「答えるのが恥ずかしいのなら頷くだけでいい。私のモノが欲しいのだな」



 ラモー・ルーが何かを確信したかのように問うと金髪の少女はゆっくりと首を縦に振った。

 一度ならず二度もコクリと頷き、自身の下半身を見ながら生唾を飲み込んでゴクリと喉を鳴らす。

 ところが彼女の心はまだ完全に支配されていない。声や表情に出すことが出来なくても肯定の頷きを真っ向から否定する。消えかけの理性による
 最後の抵抗だった。



――違うの、待って! 欲しいなんて言ってない。これっぽっちも思ってないんだから!



 どんなに否定しようがそれが相手に伝わらなければ意味がない。声にすることも、表情に出すこともできないことがどんなに恐ろしいことだろう。

 この時ばかりキャロンはそう痛感させられた。

 漆黒の肉棒による振動のようなうねりが鎮まったことが如何なる意味をしているのかと悟って心がざわめいた途端にドクンドクンと激しく鼓動しだす。

 恐怖と嘆きによるものだけでなく、悦欲を満たしてくれる期待感があってのことを少女自身が分かっていなかった。

 虚ろな瞳は闇色のうねりが迫る様を追い、表情が綻んでいることも――。



「お願っ……い、いいぃぃっ!」



「よかろう、たっぷりと可愛がってやる。蜜の極めを頂くには最高の濡れ具合よ」



 魔術がまだ完全に掛かりきっていないことを一番理解しているであろうにも拘わらず、ラモー・ルーはキャロンの頷きを肯定として受け取った。

 無数に生やした腕や触手をもって小柄な裸体を弄りまわしながら声高らかに笑う凌辱者の目つきが変わる。



「フハハハハハッ! 極上たるその蜜、存分に味わい尽くしてやる!」



 欲望の象徴ともいえる肉棒が愛蜜の糸を引いて膣口から離れたのはほんの僅かなこと。今度こそ貫かんと身構える様が美少女剣士の愛らしい瞳に映る。

 鎌首をもたげるかのように狙いを定めたのもつかの間、ラモー・ルーの下腹部からまた新たな波打ちが起こり、これに呼応したかのようにキャロンの
 両脚に巻きつく触手が股を開かせた。

 膝をやや曲げ気味に足首を引っ張り、濡れぼそった蜜園とこじんまりと息づくアナルまで丸見えの恥ずかしい格好にさせつつ、亀頭へと押し寄せる
 一際大きなうねりが宣言通りに穢れなき乙女心を絶望させる。



――あたしの初めてが……こんなのやだ、挿れちゃやだ、やだぁぁっ! お願いだからやめてぇぇーーーーっ!



 心の慟哭はどんなに叫んでも決して届かない。

 ちっぽけな理性による哀願がこの期に及んでもはや無意味であると思い知らされる最中、漆黒の大きな波打ちが粘液をまき散らしながら先端へと
 進むにつれて勢いを少しずつ増していく。

 ビュンとしなりがついにエラが異様に発達した亀頭まで行き届くと、強靱に張り詰めた暗黒のペニスが勢いそのままに処女穴へと迫る。

 キャロンは見たくもない己の運命から目を背けることすらできない。虚ろな表情が少しばかり嬉しそうに綻んだことも分かっていなかった。